勝率を計算する


さて,前回までに何通りの出目で上がりにできるかがわかっていれば, 簡単に確率に変換することを覚えたはずですし,また,簡単な確率計算もできるようになりましたね. 怪しい人は是非復習してみて下さい.今回は,これまでの内容を使って, もう少しだけ複雑な局面(複雑とまではいかないけど)での勝率の計算にも慣れておきましょう.

まずは,以下の局面を見てみましょう.相手の振り番です.



さて,明らかに不利な局面ですが,あなたの勝率はいくつでしょう. 実は,この局面は「2ロール2ロールポジション」というポジションです. つまり,双方が2ロール以内には必ずすべてのチェッカーを上がりにできるポジションということで, 非常に有名で,かつ,大事なポジションの一つです.もちろん,この場合, どちらかにぞろ目がでれば1ロールで終わりになります. 多くのバックギャモンプレイヤーはこの局面の勝率を暗記しているかもしれません.

しかし,ここでは,前回までの方法を使って,自分で計算してみましょう.

まず,振り番は相手ですから,相手がぞろ目を出すと相手が勝ち, ぞろ目以外の目を出すと自分に振り番が回ってきて,勝つ可能性が出てきます.そして, その後,自分がぞろ目を出すと勝ち,ぞろ目以外だと負けることになります. まとめると以下のようになります.

相手がぞろ目→相手の勝ち
相手がぞろ目以外→自分がぞろ目→自分の勝ち
自分がぞろ目以外→相手の勝ち

上記を見ると,三つのケースに場合分けされますが,自分の勝ちとなる場合が一つだけですから, それを計算してみましょう.ぞろ目を振る確率は,どのぞろ目でも良いので 6/36=1/6 です. したがって,ぞろ目以外を振る確率は,「〜が起こらない」を使って,1-1/6=5/6 だとわかります. その後,「かつ」自分がぞろ目を振らないとなりませんから,結局,自分の勝つ確率は,5/6×1/6=5/36 だとわかります.

さて,勝率は何%でしょうか.5 に最も近い 4 の倍数は,4ですから,5/36 は,4/36+1/36 と考えます. 4/36 は,1/9 なので,11.11111% でしたね.1/36 は,2.77777 ですから,5/36=11.1111+2.7777=13.88888 です. つまり,この局面の白の勝率は,正確に 13.8% であることが計算できました.白の勝率はわずか 13.8% しかありません. マネーゲームやスコア差のないところで,ダブルをかけられたら,パスをしないとならない局面ですね (テイクするには 25% 程度が必要だということが知られています.これについては,また別の時限で学習します).

2ロール2ロールポジションは,ダブルパスって覚えている人,または,振り番の勝率が 87% と覚えている人などが いるかもしれませんが,確かに覚えておいて損はありませんが,是非,自分で計算できるようにしておきましょう. そうしないと,ちょっと似たような局面のときに応用がききません.

上の局面は,たまたま勝率が36分のなんとかとなったので,簡単に計算できました. では,次のような局面ではどうでしょうか.



相手が2以上のぞろ目→相手の勝ち
相手が2以上のぞろ目以外 →→ 自分が3以上のぞろ目→自分の勝ち
それ以外→相手の勝ち

同様に,自分の勝ちの場合を計算すると,相手が2ぞろ以上を振る確率は,5/36 ですから, それ以外の確率は,1-5/36=31/36.そして,自分が3以上のぞろ目を出す確率は 4/36 です. これらが同時に起こらないとならないので,31/36×4/36 となります.(31×4)/(36×36)です. 36×36は,1296なのでこれは覚えておきましょう.

31×4はがんばって計算して,124を求めます.124/1296 が求める答えです.129/1296でほぼ10%ですから, 10%よりちょっとだけ少ないことがわかります. だいたい勝率を求めるにはこれで十分な精度のことが多いのでこういったやり方を覚えておきましょう.

どうしてももう少し精度よく求めたいという人は,さらにいくつか覚えておくと良い数字があります. 129/1296=約9.95%
10/1296=約0.77%
13/1296=約1.0%
これらを覚えておくと便利です.124/1296 は, 129/1296 - 5/1296 ですから, 9.95% - 0.77/2 = 9.95% - 0.38% = 9.57% となります.ただし,これはかなりの上級者向けなので, 余裕のある人のみマスターしましょう.

では,一つ練習問題です.同じく相手の振り番ですが,自分の勝率はいくらでしょうか.



答え

相手が2以上のぞろ目 →→→→ 相手の勝ち
相手が2以上のぞろ目以外 →→ 自分が1以上のぞろ目 →→ 自分の勝ち
                    それ以外 →→→→→→→ 相手の勝ち


なので,自分の勝率は,

(相手が2以上のぞろ目以外)×(自分が1以上のぞろ目) =(1-5/36)×6/36=31/36×6/36=186/1296

186-129=57なので,186/1296=129/1296+57/1296=10%+アルファ となります. 57/1296 は簡単に計算できませんが,倍をしても 114/1296 となり,129/1296に足りないことから, 5%以下であることはわかります.ですから,求める勝率は,15%に少し足りないくらい,となります.

もっと精度良く求めたい人は,129/1296+57/1296 ですから, 9.95%+0.77×5.7=9.95%+4.4%=14.35%程度と求めることができます.57/1296がうまく計算できない人は, 13/1296が1%であることを考えて,26/1296が2%,39/1296が3%,52/1296が4%,65/1296が5%となることがわかります. そうすると,57/1296が4%から5%の間で,4%寄りということからだいたいの勝率を見積もることができます.

精度良く計算するには,頭が混乱しますが,いつも同じような数字が出てくるので慣れれば早く計算できるようになります. 今回は数字が出てきて,かなり難しくなってしまいましたので,次回はちょっと話題を変えてみましょうか.